コザの中之町に生まれた男の子の物語です。
五人兄弟の末っ子で,生まれる時に,臍の緒で首をしめて一度死にましたが,産婆さんにひっぱたかれて,この世に戻ってきました。
一度死んだので,その名前をグブリーサビラといいます。
グブリーサビラは夢を見るのが好きで,一日中眠っておりました。
眠っていない時は,グスク(城)まで,片昼かけて歩いて行って,丘の上から,海を眺めていたものです。
川の水が海に混ざっていくのを,丘の上から,よく眺めたものです。
グブリーサビラは言いました。
「さようなら」
グブリーサビラは幼稚園にも学校にも行かず,中之町でいたずらをして,遊んでばかりおりました。
夕方になると,お姉さんたちが仕事に出かけてきます。
ねーねーたちはいつも,グブリーサビラに「うきみそーちー(おはよう)」と声をかけます。
酒場の扉が閉まると,グブリーサビラは言いました。
「さようなら」
コザから自転車で下っていくと,泡瀬の海があって,グブリーサビラはいつもそこに行って,貝や魚と喋っていました。
夕暮れになると,キジムンも「コメツキガニの浜」からやってきて,グブリーサビラと喋るのでした。
豚小屋の神様の話,家族の思い出,戦争のこと,もあしびーのロマンス,キジムンはいろんな話を,グブリーサビラに聞かせるのでした。
タマンやアバサーも,波打ち際に寄って来て,グブリーサビラとキジムンの話に加わります。
南十字星がやってきて,夜もとっぷりと暮れて,母親も心配している時刻です。
貝と魚とキジムンと星に,グブリーサビラは言いました。
「さようなら」
さてまた,どこかで,この物語の続きが読めるでしょう。
グブリーサビラは言いました。
「ゆくいみそーれ」
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