「でーじに着陸」2007/12/19

 コックピットでは，ジュゴンが可愛いい声でジョークを飛ばしていた．「どうだい，ヤマー，俺の運転も捨てたもんじゃないだろう，バシバシ」．副操縦士の山岡は腕を組んだまま，「う～ん，こりゃすげえ，テレビチャンピオンに出たらどうだ」としきりと関心している．「おもかじ，いっぱ～い」と機長の声が響いた．ネクタイを頭に巻いた山本は，チンチロリンですってんてんになって，すっかり酔っ払って，やっとコックピットに戻ってきたのだ．

飛行機は辺戸岬の上空を飛んでいて，「辺野古におりていいですか，バシバシ」とジュゴンが言うのだった．

「俺は，海洋博公園がいいな」と山岡が言った．「中之町，中之町，次は中之町に泊まります」と機長が泡盛を片手にうわごとのように言った．「嘉手納に下りて，あんまあ（お母さん）に会いたいよう」とチーフパーサーが言った．

ジュゴンは「だからよ」と言ったきり黙りこんでしまった．「だからよ」とは，もう議論はお断りという意味である．山岡たちもあきらめて，ブラックジャックを始めた．

ジュゴンは複雑な計器を前に「であるわけ」とブツブツ言いながら，着陸しようか着水しようか悩んでいた．

バシバシ，バシバシ，バシバシバシバシ，，，

コックピットに神経質な尻尾の叩音だけが規則的に響く．

「高度30フィーーート」

聞き取りにくいジュゴンの鼻声が機内全体に大きく響いた．

客室のディスプレイに紅の守礼の門が美しく映し出された．

「わあ，沖縄だあ！」と大きな歓声が機内に響いた．

投稿者: 由