山口県上関町長島の上関原発建設計画地では,中国電力(中電)による,発電所建設免許申請のためのボーリング調査(「詳細調査」と呼ばれる)が続いている.陸域・海域に何十ヶ所ものボーリングを行うこの調査は,長島の生態系を大きく破壊している.
大規模に自然環境を改変するこの事業は,「調査であって,工事ではない」という位置付けであるため,アセスメント(環境影響評価)が義務付けられていない.そのため,中電がいかに自然を破壊しようとも,環境省も経済産業省も法規に則した強制力のある対応をすることができない.
沖縄の辺野古でも問題になったが,これは環境行政の大きな盲点であり穴である.開発に伴う「調査事業」はもちろん必要であるが,事業の規模や自然改変の度合いに応じたアセスメント制度が制定されるべきである.でなければ,「調査という名の自然破壊」は今後も大手を振って歩くだろう.この抜け穴を通って,生態系を堂々と破壊し,大儲けしている企業が多くあることは想像に難くない.
今回,「長島の自然を守る会」は環境省と経済産業省へ,この「詳細調査」の中止の申し入れを行った.その中で鮮明になったのは,この「調査という名の自然破壊」の抜け道の法的奇妙さだった.環境省の人たちは,この問題を重く受け止めてくれたようだが,経済産業省の人たちはちゃんと考えてくれるだろうか? この「調査という名の自然破壊」について,電力行政における経済産業省の「道義的責任」は大きいと思うが,彼らは責任の所在について何も答えなかった.電力関係の所轄官庁であることにすら言葉を濁した.
「法的にできない」のであれば,法律を変えていくしかない.政治家や役人の有能さというのは,現実を保守するにあることではなく,より良い現実を想像し,新しい現実を創造する能力にあるように思える.歴史的な是非は別として,田中角栄が有能な政治家として評価されるのは,この「現実を作り変える」能力,法律や慣習を乗り越える能力があったからだ.現代の日本の公務員の事無かれ主義には,全くウンザリする.一人で世の中に切り込むのが侍であるとすれば,「侍」はどこへ行ってしまったのだろうか?
法律が,現実社会の神の国であるとすれば,政治の中枢にいる政治家と国家公務員は,それを動かすことができる,神の国に最も近い人たちである.
だから,民の言葉を神に取り次いでもらえるように期待し,税を払っているのだよ.
Yes, I do anything in this God almighty world,
Baby let's me follow you down!
山口県上関町長島の山野で採取されたキノコ(2005年7月24日).このような豊かな山林が「詳細調査」によって破壊されている.
投稿者: 由
前ブログでのコメント
返信削除投稿者:山下由2007/2/11 22:29
安渓先生,御連絡ありがとうございます.読んでいて,怒りが止まりません.カラスバトがいた時点で,工事は止まってるべきです.保安林や「違法工事」の点で,工事は止められるんじゃないでしょうか.長島は「聖なる地」という思いが,ひしひしとします.
投稿者:安渓 遊地2007/2/10 18:25
2月8日、現地へ行ってきました。同志社大の室田武さんと若い研究仲間の3人が、共有地の問題の研究のため、ということでした。
案内しながら、現場へ久しぶりに降りてみて、その破壊のひどさに息をのみました。
2,3日中にHPで写真を紹介します。保安林借用許可をもらっておいて、その中で木を切っていくというのは、保安林の定義からしておかしい。
詳細調査をして建てて良いかの安全確認をしている期間なのに、敷地ののり面づくりの本体工事をもう始めています。これは、法律に反していると思われます。
こんな事実を知ってしまった「わたし・たち」は、どうすればいでしょうか。できることをさがしましょう。
http://ankei.jp
投稿者:山下由2007/1/31 13:22
政治家・公務員・侍の正しい生き方については,
http://www.ne.jp/asahi/chika/on/y_tails-03.htm
「日本のいい男」を御参照下さい.