2022年6月4日土曜日

「東京湾のカキ漁場」2007/4/23 

「江戸前貝類漁業小史」(塩屋ほか,2003)によると,東京湾内には多くのカキの漁場があり,明治から昭和にかけて「カキばさみ」「カキ桁網」などによって漁獲されていたが,昭和45年には資源が枯渇して漁獲対象ではなくなったようである(高島,2007).「カキばさみ」「カキ桁網」での漁獲対象に,イタボガキ Ostrea denselamellosaも含まれていたのではないかというのが,とても興味が持たれるところなのだが,少なくとも浅海域のマガキ礁や群集は確実に漁業に利用されていたようである.

カキ漁場の地図を見ると,東京湾の浅海域に,かなり多くのマガキ群集があったことが推測される.つまり,マガキ群集は東京湾の生態系の大きな構成要素の一つだったと考えられる.

そのため,現在の漁業的利用価値が低いからという理由で,マガキ群集を邪魔者扱いするような議論は,東京湾の生態系の本来性を見誤るものである可能性がある.

カキ漁場の地図を見ると,それは干潟・浅海域に存在するので,カキ礁も少なからず存在した可能性があり,過去の環境の詳細な調査が必要と考えられる.

今後,東京湾においてマガキを漁業利用できる可能性は様々な意味で低いと考えられるが,東京湾の生態系の中における干潟・浅海域のカキ群集という「系」の存在は,東京湾全体の生態系保全において,排除すべきものでないことは明らかではないだろうか.

持続可能な漁業の基盤は「豊かな海」にあり,「豊かな海」とは生物多様性が高く,「系」が複雑であることによって支持される.ある特定の種を対象とした漁業や養殖漁業が,他の「経済的価値のない」種の生息地を破壊したり,その生存に対して排斥的になるべきでないことは,総合的な漁場維持という観点から留意される必要がある.

三番瀬のカキ礁に生息するギンポ.干潟域に岩礁環境が少ない東京湾では,カキ礁は多くの岩礁性海洋生物の「避難場所」になっている.こうした「経済的価値のない」多くの種が「豊かな海」を構成する.


投稿者: 由

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