さて、お正月も七日を過ぎて、成人式を迎えた山猫たちが、倶利伽藍峠に集まって、お話を始めました。
今まで食べた中で、何が一番おいしかったかという会議です。
「やっぱり、コムタンっしょ」とツシマヤマネコが言いました。
「チキンライスが一番だよ」とベンガルヤマネコが言いました。
「ピロシキを食べたことが、おありかな」とアムールヤマネコが言いました。
「浅草の金寿司に行ったことがあるかい」とタマが言いました。
「世界で一番おいしいのは、なんと言っても丼さ!」、ウンピョウが大きな声で言いました。
「丼?」
田舎育ちの多くの山猫達は、丼という食べ物を知りませんでした。
その頃、峠の麓では、丼たちが蕎麦屋を借り切って新年会のドンチャン騒ぎをやっていました。
「おたく、いい器に入ってるね」などと和気あいあいと飲んでいた丼たちですが、夜更けになって、ホッピーの飲み過ぎで悪酔いしてしまったようです。
一座のそこかしこで、ののしりあいや喧嘩が始まってしまいました。
「だいたい、鰻丼はすかしやがってよー」とカツ丼が言いました.
「カツ丼が王様ですかっての!」と玉子丼が言いました.
「玉子丼は黙ってろ!」,カツ丼が叫びました.
「やんのか、こらっ!!」と牛丼が立ち上がった時のことです、
それまで黙って聞いていた親子丼が重い蓋を開いて、
「では、倶利伽藍峠のてっぺんまでかけっこをして、世界一の丼を決めようではないか」と言いました。
「そいつあいい、がってん承知ノ助」と鉄火丼が言いました。
「いい提案あるネ」と中華丼もうなづきました。
こうして新年早々、丼たちの熱いマラソン大会が始まったのです。
投稿者: 由
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