韓国の昔話で,よくある枕言葉に「虎が煙草を吸っていた頃のお話です」というのがある.これは「昔々」という意味で,別に虎の話が始まるわけではない.私が読んだ話では,その後,ノロジカとキツネとヒキガエルが出て来て,「誰が一番目上で,宴会の上座に座るにふさわしいか」というろくでもない争いをしただけで,虎のトの字も出て来なかった.
ところでまた,韓国の昔話に「虎の毛が縞になったわけ」という重要な話があって,それは「虎は寝煙草をして,毛が焼けて,縞模様になりました」というものだ.
つまり,寝煙草でやけどをするまでは,虎には縞模様が無かったわけである.虎はよく知られているように,とても真面目な動物であるので,やけどに懲りて煙草をやめたに違いない.すなわち「虎が煙草を吸っていた頃」というのは「虎に縞模様が無かった頃」なのであり,そんな虎は誰も見たことがないので「昔々」ということになるわけである.
とにかく縞模様になってから,虎はきっぱりと煙草をやめた.その証拠に今日,「縞模様の虎」が煙草を吸っているところを誰も見たことが無いのである.
私が親しくしているソウル大学の哺乳類学者は,「もしあの時,虎が煙草をやめていなかったら」と深刻な面持ちで語り,「今頃は,格子模様の虎や,黒虎がいたかもしれんよ」と,腹を抱え笑い転げてのたうち回った.
それにしても,「虎に縞模様が無かった頃」なのだが,昔の人はどのようにして,その動物を虎と考えたのだろうか.
或る分類学者(喫煙者)の部屋に張られていた書
投稿者: 由

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