2022年7月10日日曜日

「古生代の頭脳」2010/9/23 

松浦瀬で採集された生物


唐津湾の名物の一つが,このタテスジホオズキガイ(写真中央).虹の松原の海岸を歩いていると,生きたまま打ち上がっていることがあって,これは全国的に珍しい例だと言える.

虹の松原の海中でどのように生息しているのか気になっていたが,今回,松浦瀬で生きたものが採集された.飯田先生が潜って採集してきた.

カイと名がついてはいるけど,これは貝(軟体動物)ではなくて,腕足動物.タテスジホオズキガイは,腕足動物の中では,一般の人が最も目にしやすい種で,各地の海岸の打ち上げや浚渫土砂中で見かけられる.それでも,浅海域の生息地は限定的で,どこの海岸でも見られるわけではない.唐津湾は浅海域の安定した生息地で,貴重である.

潮間帯~水深300mまで分布していて,100m前後に多い種とされ,相模湾でも80mくらいの海底に多いらしい.

古生代に大繁栄した腕足動物は原始的な濾過食者で,より洗練された濾過食者である二枚貝類との競合によって,現在は種数も生息地もごく少なくなったと考えられている*.腕足動物全体が「生きた化石」とみなされているのは,こうした事情による.

唐津湾では,イガイ・カキなどの類で卓越している種類がないので,タテスジホオズキガイにとって棲みやすい環境なのかもしれない.


唐津湾のタテスジホオズキガイ.開いてみると,なんだか脳味噌のようだし,ゼンマイ仕掛けの旧式の機械のようにも見える.


*濾過食における優劣の問題ではないとされる:「古生代の末の大絶滅で大ダメージを受け,二枚貝との勢力の逆転が起きるのですが,これは決して腕足類のほうが二枚貝に劣っていたためではありません。ですが,肉茎による固着生活が基本の腕足類とは違い,二枚貝は筋肉質の斧足を持ち,それによってある程度の移動が可能なのでより幅広い環境での生活ができ,環境の変動を乗り切ることができたようです。」http://paleontology.ac/paleo/brachiopoda.html


投稿者: 由

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