2022年7月22日金曜日

「エイブラハム・リンカーンが橋を渡る」 2017/5/27  


それはすごく古いレコードで

雨の音がする

猫の匂いもする

ちょうど旅行に出かけた秋に

僕たちは自分を刈り取って

溜息をついた


そんな地球の恋人たちが

街角でロカビリーを踊り

洗濯バサミにはライナーノーツが干してあった


もう君を思い出さないよ(忘れない)

朝の港で船の舫を見ながら

空は歌う


僕らは過去を収穫してワインにして飲んだ

宝石の中では蟻が夕日を食べ

満天の星空に脳を干し

龍は胃液で地球を浸した


どこまでも愛が続く

三番街で

ウォールストリートで

失われたカジキの漁港で

小説が燃えているカテゴリーの中で

彼女は僕の地球を創り

僕の花を花壇に植え

土をかけてくれた


キスのように甘い雨が降る

地球は五月だ

黄金虫と心臓が高らかに歌い

壊れた恋のスクリューを回し

子供たちは外へ出て

革命を起こす


ロシアでアフリカで中国で

人間に感染していく

言語という病の中心で

政府を作り

君を乗せるための船はどこにあるだろう


いつか嵐が来て

笑いをここに還す

共和国の旗が告げるのは恋だ

ロベール・デスノス

僕は自由も愛も失ったよ

広場に集まれ

家へ帰れ

彼女は僕の地球を創り

僕の花を花壇に植え

土をかけてくれた


埃の針音がする半世紀が過ぎて

夕暮れのマリアの影が熟れたトマトに話しかける

銀のフルートより重いものはない

半獣神になった未来の中で死ねればいい

神々の栄光から遥かに遠い海辺で

貝殻を探す


あのアパートにあった心臓のぬくもり

ガラスの破片の上を歩いていたような毎日

注ぎ足されるコーヒー

新しいミルク

新聞と埃の匂い

猫がつけた足跡

足跡から立ち昇る音楽

黒い泉の中で回り続ける歌

革命と愛の歌


僕らは生まれていたのか生まれていなかったのか


ただ

彼女は僕の地球を創り

僕の花を花壇に植え

土をかけてくれた



12 November 2008


ごくわずかに修正(27 May 2017)



投稿者: yuu

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