10月7日,某貝類研究会の年次大会が大阪市立自然史博物館の一室で開かれた.素晴らしい研究者たちによる素晴らしい研究発表があった.それから,ののしりあいのような総会が無事終了して,非常に危険な雰囲気の懇親会も大団円を向え,宿をとってある紀三井寺へ電車で向う.
なにしろ何人かは,懇親会で酒をたらふく飲むために,この日の朝に,紀三井寺のホテルに車を置いてきているという用意周到ぶり.それにしても,大阪で飲むのに,和歌山に車を止めておくというのは,あまり聞いたことがない.
とりあえず主要な行事は終わったので,「さあ,明日からバンバン貝を採りまくるぞ!」というわけで,宿で浴衣に着替え,ピンセットの角度を調整したり,ホルマリンの濃度を嗅いで確かめたり,篩についている細かいゴミを超音波洗浄器で洗い流したりして,「ひゅーひゅーひゅー」と興奮で酸欠になりながら,それぞれが採集準備に余念がない.
私は自慢のスミスマッキンタイヤ型地下足袋「兼政六号」の入念なチェックを行う.「介類採集は先ず足元から整ふるべし」と云った中田次平先生を思い出しながら,絹のタワシで地下足袋を磨き上げる.
貝屋の聖地・紀州での採集に力が入りすぎ,地下足袋のハゼがポロリと一枚欠けてしまった.著しく狼狽し,夜の街を浴衣で徘徊し,寝静まっている12時間営業のコンビニを叩き起こし,スペアのハゼを買い求め,取り替える.
時刻は既に午前4時,夢のような貝たちが待っているかと思うと,眠る気力も失せていく.
戦前・戦中にはゼロ戦の機体を製造していた「月星製作所」の技術は,今日では地下足袋のハゼにその面影を残すのみ.レアメタルで作られたハゼは,一枚が8万~12万円する.
投稿者: 由
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