2022年6月13日月曜日

「歳末慈善大相撲 国崎場所」2007/12/31

さて,クリスマスも近づいたある日,関東某所では某マイナー貝類談話会の役員会・例会・忘年会が開かれることになっていた.

孤独で淋しい貝馬鹿たちがせっかく集まるということで,私は「今週土曜日の役員会では,クリスマス・シーズンにふさわしく,恒例のプレゼント交換会・YOHIN OLYMPIC 2007が行われます.2007年に,NIKUNUKIと共に,全世界の貝屋用語となったYOHIN.軟体動物学における余品の現代を検証するため,参加者各位は,選りすぐりの余品(3品)をお持ちより下さい」と,うきうきして余品交換会の開催を一方的に役員会に宣言するメールを送った.

余品とは軟体動物学の高度な専門用語で,例えば昭和22年にGHQの命令で編纂・発行された「介類学小事典」によれば,以下のように定義されている.

余品:数多くあって余っている標本.もしくは他人に分け与えてもいい標本.ただし,もらった人が多少なりとも喜ぶ,もしくは人に分け与えることで自己満足が得られる程度の標本であること.

YOHIN,TAIHO,TAMAGOYAKIと呼ばれるように,かつて子供たちの大好物であった余品.貝屋が女房よりも好きだと言う余品を持ち寄って,楽しいクリスマスを過ごしましょうという提案は悪くなかったと思う.

私は,この大プレゼント交換会は忘年会で開催という気持ちだったのだ.しかし,役員会と忘年会の区別がついていなかった私は,この交換会を役員会で開催と言う内容でメールをうっかり送ってしまった(サブジェクト「役員会のお楽しみ」).

それからは蜂の巣を食卓に乗せたような大騒ぎになった.役員会を真剣に考えていた人たちから「Fuck you」とか「余品って何ですか」とか,「人にあげる貝は一個もない」「何を持っていくか楽しみで眠れません」「私も役員になっておけばよかった」とか怒涛のような苦情と歓喜のメールが押し寄せてきたのだ.

そして,2007年12月19日,「YOHIN OLYMPIC 2007」は千葉県船橋駅前・ちゃんこ鍋屋「国東」で「ごっつあんです.我々は貝屋の本分である余品に想いを馳せ,余品に込められた諸先輩の思い・怨念を忘れず,正々堂々と余品を交換することを誓います!」の選手宣誓と共に華々しく開催された.役員会での開催は,会の将来を心配する建設的な意見によって回避され,忘年会に持ち込まれたのだ.

シナハマグリ入りの巨大なちゃんこ鍋が置かれたテーブルの上に美麗な貝が広げられる.朝青龍と日本社会の封建性.相撲部屋のような学会体質.福田首相の誕生.払っていない年金は,私に還って来るのだろうか? 2007年の様々な思い出が脳裏をよぎりながらも,居酒屋の乱雑なテーブルの上の可愛いいキセワタの殻が割れないか,カセンの棘が折れないか,上野駅で昔別れたあの貝はどこに行くのか,気が気ではない.

タスマニア,スペイン,コレア,ジャパン,ディープシー,オリンピックを彩る世界各国の貝たちが国歌を歌いながら入場してくる.

「ちょっと待ったあああ」「花いちもんめ」「最初はぐー」,様々な怒号,未練,涙,狐の嫁入りの中で粛々とプレゼント交換が進んでいく.

最後は,会長・副会長の野球拳勝負になった.目を覆うばかりの,精神の裸体のぶつかり合い.ちゃんこ鍋屋で忘年会を過ごしているOLたちも「もうやめてー」と,貝屋の珍妙な裸相撲に小指と薬指の間から熱い視線を送っている.

東横綱:クラゲツキヒ+変なカツラガイ(髭の男がドレッジか底引きで手に入れた駄貝)

西横綱:アツクチケイトアミマイマイ(浪花の女の子が夜なべして手編みで作った蝸牛)

を賭けた大一番.

じゃんけんで勝った副会長は,迷わず「クラゲツキヒ+変なカツラガイ」に手を伸ばしたものの,土俵際でかろうじて人間性を取り戻してアツクチケイトアミマイマイを「ごっつあんです」と選んだのだった.



アツクチケイトアミマイマイ


*この日,一番人気が無かったのは,会長が持参した淡水貝の余品.「これ,本当に余品じゃん」と罵声が飛ぶ.会長に貝屋の真骨頂を見た年の瀬だった.


寒蜆 むらさきの いろせめぎあふ (岡本まち子)


投稿者: 由

1 件のコメント:

  1. 前ブログでのコメント
    投稿者:モモノハナ2008/1/3 19:13
    アツクチケイトアミマイマイ
    かわいい!

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