それで,こちらはTellina (Moerella) rutila ユウシオガイ.リュウキュウザクラと同じ亜属の「桜貝」で,本州~九州~朝鮮半島~中国の内湾干潟に分布する.
故郷の大分県姫島の「みつけ干潟」には,1980年代まで生息していた.白・黄色・紅色があって,とても可愛い貝で,私の原風景的な貝のひとつ.
姫島の干潟で絶滅した原因は,赤潮あるいは青潮の繰り返し,及びエビ養殖場からの化学物質の廃水の影響によるものと考えられる.姫島の干潟では,ユウシオガイとハマグリが1980~1990年代に絶滅し,現在も復活していない.
ユウシオガイは東京湾・相模湾では絶滅しており,日本各地でかなり多くの地域個体群が消滅したと考えられる.
イボキサゴ,ユウシオガイ,ハマグリは,内湾砂泥干潟の「状態の良さを示す」環境指標種の代表的なものと言えるだろう.
それで私は,ユウシオガイがいる干潟は「まだ,大丈夫.状態がいい」という位置付けをしている.ユウシオガイの個体群の消滅状況から考えると,この種は,水質の悪化や化学汚染にかなり弱いのではないかと考えている.それで,浦内川のリュウキュウザクラの減少も,水質や底質の悪化の兆しとして,とても心配になった.
こういうのは殆ど「漁師の意見」であって,科学ではないですがね.はっきりと変化が目に見えていても,「科学的データでものを言って下さい」と言われて,手遅れになるのを待たされるのがオチです.「それより,あんたら,リュウキュウザクラもユウシオガイも知らんだろうが」と言うのが,我々,野蛮生物学徒の意見ですけどね.
「科学的」データは,そこらに山のようにある.諫早でも泡瀬でも,国が莫大な税金を使って,科学的データを集めて,非科学的な議論と結論を日々作り出している.そこでは,データの解釈と言うのは,先に言った方が,声が大きい方が勝ちなのだ.
泡瀬で,沖縄総合事務局がやっている「アフターケア」の科学的調査(データ)は,実に素晴らしい.だが,それをどうやったら,あのような非科学的結論に持っていけるのか.データを取ったアセス会社の社員も憤死しそうな,生物学への嘲笑だ.科学と政治の区別もつかないような奴らが,自分に都合のいい「科学的結論」を作り出す.レスポンスフローって素晴らしいじゃないか,1枚の表で環境と生物への虐殺命令が出せる,頭の良さそうな図表だ.
科学者は議論に加わらない,そして市民のいったい誰が,あのくそ厚い報告書(本当に素晴らしいんだけど!)を読みこなすのか.事業者自らが科学的でなく,善なる判断を下せないために,俺たちは,調査・分析・自然の死・生活と精神の死のために,理解し難い税金を払い続ける.税金だぜ! あなたのお金が,有明海や泡瀬の海の死のために,漁民が首をくくるために,沖縄の心が死ぬために,支払われ続けている! 寄付だとしたら,こんな奇妙なことがあるのか? なんて言う慈善事業だ!!
これは絶対的にユウシオガイ(夕汐介)の話だ.
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