さて,私はこの歳になって,いよいよ色男であることが際立って来て,金も力も著しく乏しいことは,衆人もうらやむほどである.
それで,世間では色男として,肩で風をガスガス切って歩いてはいるが,家では豚肩肉のように肩身が狭く,最近は料理を作ったりして,家庭内での権力維持に腐心している.
ピックより重いものを持ったことがなかった私も,今では中華鍋を一度に3個持ち,天津丼と餃子と中華丼を同時に作り,片手間にフレンチトーストを作るまでに成長した.
それで,一昨日はゴーヤチャンプルを作った.
ブルースマンであろうと,ジョーカーマンであろうと,男と生まれたからには,一度はゴーヤチャンプルを作らねばならない.
神に誓って告白するが,私はこれまで,ゴーヤチャンプルを食べて「おいしい」と思ったことは一度もないし,好物でもない.
しかし,「沖縄で生まれた男やさかい」みたいな顔をしていて,ゴーヤチャンプルを作ったことがないというようなことになると,国会で内閣府に厳しく追及されるかもしれない.ゴーヤチャンプルを作ったことがない男というのは,E#mを押さえられないブルースマンと同じで,人生の深遠を覗いたことがない若造のように思われるだろう.私は,E#mをマスターするよりゴーヤチャンプルを作る方が楽だと思って,その機会を伺っていた.
そんな具合で,近所のスーパーに出かけたある日,「島豆腐風」豆腐というものが売られていた.かねてから,島豆腐を大和で買えないことにイライラしていた私の偽沖縄人の心に火がついた.しかも,「島豆腐風」という偽沖縄人にふさわしいカジュアルな豆腐だ.私は迷わずそれを手に取って,野菜売り場に幸いに存在したゴーヤを買い求め,缶詰売り場で贋物のスパムも買った.贋物のスパム!だよ,どんなメールか読んでみたいもんだ.私の心の中は,福沢諭吉が不動明王をしょって,今こそゴーヤチャンプルを作らなければ,日本の民主化はないというところにまで達していた.
ネットのいろんなサイトを見て,ゴーヤチャンプルの作り方を検討したところ,材料を入れるタイミングは,サイトによって出鱈目で,適当でいいことが分かった.さすがチャンプルーである.
ゴーヤを塩もみするように勧めているものが多かったが,塩がもったいないのでやめた.これはと思ったのは,豆腐を水切りすることと,鰹節を混ぜることで,それはいいと思っって,偽島豆腐を皿の間に挟んで植物図鑑の重しで水切りして,静岡産の有名な鰹節を混ぜることにした.
そして私は完璧なゴーヤチャンプルを作りあげた.これまで私が食べた中で,最高のゴーヤチャンプルだったと思うが,多分気のせいだと思う.いずれにしても,鰹節を混ぜるのが重要なのは間違いないなと,私は思った.
ゴーヤチャンプルの味がするゴーヤチャンプルを作れたことを,私は神に感謝したいし,これからますます料理に口うるさく,男らしく生きたいと思う.
# 素敵な人は ゴーヤの向うから
片足を引き摺りながら やって来る
本物の沖縄料理,「まるなが」の野菜そば.
モニターを横にして見てネ.
投稿者: 山下由
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