2022年7月9日土曜日

「エビと人類の未来」2010/8/7

排水中の抗うつ剤、エビの行動に影響

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 7月20日(火) 15時27分配信


シラエビは、排水中に含まれる抗うつ剤の被害を受ける水生生物のほんの一例に過ぎないかもしれない。

 世界各地の下水道などに垂れ流される抗うつ剤の残留物の影響で、エビの行動が変化し、捕食されやすくなっているという最新の研究が発表された。抗うつ剤プロザックを飲んだエビは“ハッピー”にはならないようだ。


 研究では自然の状態を再現するために、一般的な下水処理後の排水に含まれる濃度の抗うつ剤フルオキセチンの水溶液に、河口などの入江に生息するヨコエビを入れた。フルオキセチンは、代表的な抗うつ剤製品であるプロザックやサラフェムの主成分だ。


 エビは安全で薄暗い物陰にいることを好むのが常だが、フルオキセチンの影響を受けたエビは、水中の明るい場所に向かって泳いていく確率が通常の5倍であることが実験でわかった。イギリスにあるポーツマス大学の生物学者で研究の共著者アレックス・フォード氏は、「こうした行動の変化によって、エビは魚や鳥などの捕食者にかなり襲われやすくなる」と説明する。フルオキセチンの作用によってエビの神経は、心的状態や睡眠のパターンを変化させることで知られる脳内化学物質セロトニンの影響を受けやすくなるという。


 抗うつ剤の使用量は近年急増しつつある。「Archives of General Psychiatry」誌に2009年に掲載された論文によると、2005年に抗うつ剤を使用したアメリカ人は約2700万人で、アメリカの全人口の10%を超えるという。抗うつ剤の使用が拡大することで、エビ以外の生物へも大量のフルオキセチンが影響を与えるのではと研究チームは懸念する。


「今回の実験は、どこにでもいて食物連鎖の中でも重要な位置を占めるエビに焦点を当てて行ったが、セロトニンは魚などエビ以外の生物の行動の変化にも関係がある」とフォード氏は指摘する。同氏は、抗炎症剤や鎮痛剤など他の多くの一般的な処方薬も水生生物に被害を及ぼす可能性があると警告する。


 しかし、人間が服用する薬の弊害から水生生物を守る方法もあると同氏は主張する。例えば、責任ある薬の廃棄について社会の認識を高めたり、下水処理で薬を分解する技術を改良したりするなど、問題解決に向けでできることはたくさんあるという。


 この研究は、「Aquatic Toxicology」誌オンライン版で2010年6月4日に公開された。


Kate Ravilious for National Geographic News


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このような記事があって、「安全で薄暗い物陰にいることを好む」エビが、抗うつ剤の影響で、明るい場所に出歩いたり、社交界に進出したりして、魚に食われたりしてやばいんじゃないのという話だ。

つまり、フルオキセチンを主成分とする抗うつ剤を飲んで、あの元気物質として有名なセロントニンが分泌されて(酒を飲んでも分泌される)、本来は根暗なエビが酔っ払いのように気が大きくなって、それでいいのかという話である。

どうなんだろうか。明るいエビ、積極的なエビ、目立ちたがり屋のエビ、断定的なエビ、人の意見を聞かないエビ、説教くさいエビ、そういう「天然なエビ」が増えることに、エビの養殖努力を続けて来た人類は耐えられるだろうか。エビの長所である「元気だけど、ひかえめで、はかない」「抱きしめると折れそうな存在感」という数十億年に渡って獲得された遺伝形質が、抗うつ剤によって失われようとしているわけである。多くのエビの血液型がAB型で、調子に乗りやすく、極端な行動に走りやすいという背景を考えれば、抗うつ剤の効果がエビにとって、いかに適面かは推して知るべしであろう。

こうしたエビの性格の変化について、漁獲量の増加に繋がるとして、水産業界では歓迎する声が多い。イセエビがプカプカと水面を泳いでいる光景を想像してみるといい。しかしながら、エビが持つ内省的な感情が失われるということは、その味覚も大味なものになることに間違いないので、私たちはこれから美味しいエビを食べることができなくなるかもしれない。それは結果的には、エビの市場価格の暴落を招くであろう。

この記事では、ヨコエビとエビが同列に書かれているあたりに信憑性に問題があるとも言えないではないが、抗うつ剤は「エビにも効くのだから、人間には間違いなく効く」という製薬会社の提灯記事ではないかという話もある。「エビでも明るい一歩を踏み出す」「エビでもやる気を出す」というのは、代表的な抗うつ剤製品であるプロザックやサラフェムの宣伝には、これ以上ないキャッチコピーであるように思われる。

にも関わらず、この記事の最大の教訓は、抗うつ剤やアルコールの過剰摂取による「明るい人格」の形成は、自己を見失うことで、社会的に淘汰される可能性を高めるというものであろう。これが自然淘汰かどうかは、大いに議論が分かれるに違いない。

「2005年に抗うつ剤を使用したアメリカ人は約2700万人で、アメリカの全人口の10%を超える」ということであるから、自然界にも10%ずつ「明るい生物」が増えていくに違いない。これは全世界の能天気な近代化とアメリカ化を意味し,人類にとっては警戒するに充分であるが,哲学的進化過程としては食物連鎖や弱肉強食のバランスが壊れて、いいことなのかもしれない。この記事は「エビは天然の鬱病生物」という前提に立脚したものであるが、人類がエビに怒鳴られる日も遠くないという美しい希望を感じさせる。

エビが本当に「はじける」日は近い。


投稿者: 由

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