昔,東京都内の桂花ラーメンは,そりゃあ美味しかった。熊本の桂花より美味しかったというのが,私の持論で,熊本店では焼き飯や餃子まであるのに対して(いいサービスなんだけど),東京店はラーメン一本で気合が違うということを,折に触れて友人に熱弁したものだった。
熊本ラーメンを食べたいという欲望は,体が極限まで疲れた時にやってくる。火の国の,湿度と暑さの中で生まれたラーメンは,元気を取り戻す薬膳なのだ。
とか大袈裟に言いながら,2ヶ月くらい前に,新宿で桂花ラーメンを食べた。もちろん,九州へのノスタルジーも入っていて,中毒者のように食べるんだけど,やっぱり味が落ちていて,なんと言うんですかね,店員は職人じゃなくて,バイトでマニュアル通り作ってます感がみなぎっていて,スープにレトルト感があってねー。それでも,味が濃いだけの最近のラーメンや変な偽九州ラーメンより,ましだとは思ったけどねー。
本当は私は小便横丁の狭い定食屋で,シジミの味噌汁で焼きサバ定食を食べたかったんだけど。そしたら,あの定食屋群は絶滅していて,殆ど飲み屋になっていた。ひどい,そして情報に疎い。いつからこうなちゃったのか,全然知らなかった。もちろん,安い定食屋が,この時代にあそこで生き残っていけるわけがないなと思っていたら,その通りだった。それで,桂花に行ったんですけどね。
思うに,私(たち)がいいなと思ったものは,ことごとくこの世から消えていくようだ。高円寺のモカのハンバーグ,トーストが食べ放題だった新宿の喫茶店「六本木」,二子新地の中華「紅龍」の世界のどこにもない焼肉定食。ティラノザウルス・レックスも,きっとこんな気分で,地球が変わっていくのを見てたんだろうなあ。
桂花ラーメンの味が生き延びることを祈ってます。
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熊本ラーメンの老舗「桂花」民事再生法申請
読売新聞 11月1日(月)22時34分配信
「熊本ラーメン」の老舗として知られる「桂花」(熊本市)は1日、民事再生法の適用を熊本地裁に申請したと発表した。負債額は12億5870万円。
国内外で「味千ラーメン」を展開する「重光産業」(同)の支援を受ける方向で調整を進めながら、営業を続ける。
桂花は1955年に創業。熊本市や関東地区で11店を直営しているが、製めん工場などへの設備投資が膨らみ、他店との競合も激しくなった。ピーク時の2005年度に12億円あった売上高は、09年度には9億6600万円まで落ち込み、現状のままでは業況改善が困難と判断したという。
投稿者: 由
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