貝の整理で,ほとんど眠る時間がないような日が続いていた.図鑑原稿の〆切もあって,あらゆることが,できることの限界に近づいているが,カーブを曲がった以上,車を走らせるしかない.みんな,そうやって,仕事をして生きているのだろう.
沖縄市から名護に向かう途中で,貝塚の巡検をした.現生の貝と貝殻にしか興味がなくて,「古臭ぇ化石とか貝塚とか,超ウザイって感じなんですけど~」とギャルになりながらも,科学への巡礼の旅は続く.
「へんな貝塚」を訪れた.
貝塚の周囲に散らばっている貝殻をNさんが拾って見せてくれた.ウミニナ/オニノツノガイ科(ウミニナ・イボウミニナ/コゲツノブエ・カヤノミカニモリ類)の殻頂がことごとく割られていて,現代と同じ食べ方を約3000年前の縄文人がしていたことに,とても驚いた.同じ人間だったのだなあとしみじみ思って,化石や貝塚についての「かったり~」という正直な印象を反省して,人間と生物の戦いの歴史への興味を新たにしたのだった.
目からクロコダイルの鱗!
へんな貝塚の変な貝の食べかす.オハグロガイも殻頂を割って食べてるじゃないですか.
記憶もおぼろげな縄文の食卓.
現代の食べ方はこれ!基本,縄文時代と同じじゃん! ただ唐辛子と醤油で煮てあったりして,3000年間で飛躍的に味付けが進化している(佐賀県鹿島市).人類もただぼんやりと貝の頭を割り続けてきたわけではなくて,ウミニナ類の殻をワンタッチで割るために5円玉を発明し,5円玉の必要性を完璧なものにするために貨幣制度を導入し,貨幣制度を正当化するために資本主義まで考え出した.ウミニナをおいしく手軽に食べるために,資本主義は生み出されたわけである.
すなわち,資本主義を生み出したのはウミニナであるので,原始共産主義者である縄文人たちが「打倒! 未来の貨幣制度と不毛な地球社会」をスローガンに,ウミニナ類を根絶しようと殻を割り食べまくったのは想像にかたくない.しかし,ウミニナ類の絶滅速度は遅く,日本ではウミニナの殻頂を折るために5円玉の祖先である和同開珎(わどうかいちん/わどうかいほう)が708年(和銅元年)に鋳造・発行されたが,とき既に遅く,御存知のように資本主義は泥沼化していったのである.
投稿者: hiroyoshi
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