さて,野蛮歌手野生紀行とかいいながら,「この人は九州と沖縄しか行ってなくて,なにが野生紀行だよ!」と思ってる人は多いかもしれない.
私は基本的には旅行が嫌いで,家でだらだらしているのが好きでしょうがない.旅行は準備が面倒くさいし,乗り物に乗るのがあんまり好きじゃない.
歩くのが好き
それから バスだ
海なら潜ろう
それから 舟さ
しかも私は姫島語で言うところの「けしょとれ(臆病者)」であって,非常に気が小さい.野蛮は大好きだが,マラリアのあるような地方には,極力行きたくなくて,西表を分布の南限として生きてきた.
「タイ人恐怖症だから,タイには行かない」「ミャンマーに行くのは,みゃんま早い」とか言いながら,なるべく赤道に近づかないように駄洒落でなんとか切り抜けてきた.
その昔,ライトニン・ホプキンスは唄ったもんだ.
俺は外国へも行ったがね 姉ちゃん
このライトニンは
二度とあんなとこに行きたいとは思わねえなあ
なんたって,言葉が通じないのも,憂鬱でBluesでね.
でもまあ,地球というのは不思議な場所で,マイホームで安寧に暮らそうと思っていても,そうはいかないことがあって,いろんな人たちや貝やカモメさんや水平線が「おいでませ,美ら国へ」と誘うわけです.
マラリア エイズ 破傷風
ぐるり回るは赤道の
東京 マニラ 大阪
ううううううう ポポ
そんなわけで,某文部科学省のはした金で「フィリピンに行きますよ」と言う話になった時には,私は1ヶ月間・憂鬱に過ごし,さらに1ヶ月間・マラリアとデング熱と住血吸虫と狂犬病について調べ上げ,「狂犬病はコウモリや猫からも感染します」というようなホラーな情報を仕入れ,人生の終わりについていろいろと考えた.
「こないだ,犬に噛まれたんだけど,それからむしょうにシュウマイが食べたくなってね~」「それは,キヨウケン病だー!」とか漫才をやっていた天罰が下るんじゃないかと思いながら,ふと気がつくとフィリピンのパナイ島・イロイロ市に着いていた.
イロイロ市のSan Rogueは,船外機もグラスボートもない集落で,素晴らしかった.
木製カヌーに「さあ,出発だ! 舟の側壁は薄いから気をつけて!」と言われて乗り込んだ瞬間に,有明海式干潟長靴で側壁に大穴を空けてしまった.海水がざあざあ入ってきて,もちろん乗れない.調査は2人乗りカヌーでの往復に変更.修理の材料費・手間賃で500ペソ(約1200円)をお詫びして払ったら,次の日の朝には,もう出航できるようになっていた.
写真の四角い板がそれで,漁師さんが自慢げに,その板を笑って叩く.
「野蛮歌手・山下,ここにあり」という感じで,この板と共にカヌーが南洋の海原をしばらくは走るかと思うと,船の一口オーナーになったようで,なんだか誇らしい.
いや,ほんとにごめんなさい.
フィリピンはラワン材等の伐採で,森林喪失が著しく,それは日本の紙や建築資材として使われてきた.結果的に木材は高価なものになっている.
エコノミック・アニマル・ジャパンだった頃,日本商社が海外の自然を破壊しまくった頃のお返しを,なんとかできないだろうか,深く静かに思った.
投稿者: YOU
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