泡瀬の砂・浮泥の堆積は,海草藻場だけでなく,岩礫地の生物相にも影響を及ぼしていて,アーサーなどが減少して「春の緑の絨毯」が見られなくなったのは,現地ではよく知られている.
泡瀬には,この日本新記録属のアワモチの1種が,2ヶ所の狭い範囲にいるが,生息範囲・個体数が縮小しつつあるようだ.このように体表に砂粒をやたらにつけてるのが,もうちょっと変なのだが.
生息環境の死サンゴ岩盤が,このように砂を被っている.このアワモチは,岩盤の隙間や穿孔性二枚貝のいなくなった穴などを住居に利用しているのだが,住居の穴が砂で埋もれてしまうのではないか? 最初は,砂の堆積によって,珪藻などの餌がなくなることを強く心配していたのだけど,このままだと,住居の穴どころか,岩盤自体が砂に埋もれて,生息できる環境が完全になくなるかもしれない.
アワモチ類は,分類の世界的検討が難しいので,このアワモチがごく分布の狭い種であるという可能性もないわけではない.それが,大袈裟な見方だとしてしても,このアワモチについては南西諸島での分布も生息状況も判然としていない状況なのである.河口域の環境の現状を考えると,今残っている生息地より,過去に滅びた生息地の方が多いのは確かだと思われる.そうした状況の中で,泡瀬の貴重な生息地が危機的な状況に追い込まれている.「種の名前や分布が判明する前に,種が滅びようとしている」という事態が,今まさに,目の前で起きているといえるのではないか.
泡瀬の環境異変は,疑いなく2006年から本格化した埋立工事の影響に他ならない.沖縄総合事務局は,こうした環境異変を,全て大型台風の影響によるものとしてきたが,2005年以前にも多くの大型台風があって,それでもかなり安定した状態で泡瀬の生物多様性は維持され続けていたからである.
ちなみに,泡瀬には,ドロアワモチ,ゴマセンベイアワモチ,イソアワモチ,日本新記録属2種,の5種のアワモチがいて,私が知ってる限りでは,国内でドロアワモチ科の種多様性が最も高い干潟です.
ドロアワモチもかなり減っているようです.
投稿者: 由
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